2011/10/04

久しぶりのご対面

 8年前に作った商品が修理の為に戻って来ました。
メーカーに作って頂くのではなく、裁断、縫製の全行程を本社のアトリエで行っていたこの鞄、神戸の某百貨店、1店舗だけでオーダーを受けて作製していました。
ソフトな革のブリーフケース2型と、固めの革の鞄タイプ3型の2シリーズでしたが、店頭にはそれぞれの革で1型づつ、2本しか置いていませんでした。今思うと、かなりのんびりしたオーダー企画でしたな、、。
全額前払いと納期2ヶ月!を頂いていたにもかかわらず、意外に多くのお客様からオーダーを頂き、店のイベントとしても長期間開催されていました。(ぼくも出張し、3日間、店頭でオーダーを受けました。)
2年後には、次第に多くなるオーダーの多さに、通常業務に差し支え始めて来たので、メーカーにお願いしようか?などという、本末転倒な意見も出ましたが、残念ながらイベント終了と云う形になりました。

そして8年後、奇しくも、当時オーダーを取っていた2型がほぼ同時に、修理にやってきました。




ミネルバボックスという革で作られた、ソフトタイプのブリーフケース。
このお客様、ほぼ、毎日使われていたようです。
ミネルバボックスは5年も使えば型崩れしてしまうかな?と思っていましたが、芯使いが良かったのか、びくともしていません。コレは意外な点でした。
写真には写っていませんが、内装の生地の剥がれがかなりありました。コレはしっかり改良点として憶えておかなくてはなりません。

お客様の修理希望箇所は、アオリの補強ステッチのホツレです。
ココも、何年かしたら解れるかなと思っていたものの、実際に修理に来たのは8年間で、何十本作った内の1〜2本。芯使いと補強ステッチが有効に機能していたようです。



このイベントでオーダーして頂いた全てのお客様には、お礼の手紙を入れてお渡ししていましたが、嬉しい事に、このお客様は修理品と一緒に、その時の手紙のコピーを添付してくださいました。



こちらはブッテーロという革で作られた、ダレスバッグ。
ダレスの型は糸ホツレ意外は完璧です。さすがブッテーロ。味の出方が抜群です。
糸のほつれ以外は、コレと言って不具合はありません。補強ベルトの効果もテキメンです。


商品開発に携わっている人、特にデザイナーには修理品をよく見ろ!と言っています。修理品にはエンドユーザーのナマの情報がギッシリ詰まっているからです。
強度の足りない作り。型崩れし易いデザイン。あらゆる素材の経年劣化。どんな修理が多いのか?などなど、、、机上では想像もつかないような貴重な情報が沢山です。
今回、自分も、帰ってきた修理品に詰まった貴重な情報を記録し、もし、次回があるなら、しっかりフィードバックしたいと思います。
、、、そんな機会はあるのか?