2016/05/11

映画「プリズナーズ」を観ました

録画予約した覚えもなく、たまたま録画してあった冴えないタイトルの映画「プリズナーズ」を観ました。
これがなんとも奥の深い映画でびっくりし、2度も観てしまいましたw


プリズナーズ、色々なものに囚われの身となっている人たちが出てきます。
ストーリーは子供の誘拐犯探しのミステリーですが、その裏に込められたメッセージの多さ、重苦しさにびっくりします。

誘拐された子供の親である主人公ケラーは、キリスト教原理主義者で家族と平和を愛し、厳格であり、善人であるが、家族が危険に晒されると人殺しも止みません。狩りを終えた子供に「備えよ常に」と自分が父から引き継いだ思想を、教えることから、彼をプレッパーズであると描いています。
もう一人の主人公は、北欧神話のトリックスター「ロキ」と同じ名前の刑事。彼は家族を持たず、フリーメイソンの指輪をし、首にはイシュタルの星、手にはゾディアックの入れ墨ということから、色々な宗教や考え方を取り込み、何事にも柔軟に対応出来る人物と描かれています。また、自ら「昔は少年院にいた」と悪である事を受け入れつつも、現在は警察という国家に忠誠を誓った人物でもあります。

誘拐されたケラーの娘をロキ刑事が捜査するというストーリーの中で、登場人物たちの過去は描かれていませんが、ほんの短い会話や、ラジオから流れるBGMが重要な意味を持っており、場面ごとのストーリーに込められたメタファーが数多く、1つ1つ拾いながらなど観ていくと、2時間半、一瞬たりとも気を抜けません。
特に、登場人物の多くがキリスト教原理主義者である描写が多く、カーラジオから流れるBGMがクリステャンポップであったり、車のバックミラーに十字架が掛けられていたり、「B・スプリングスティーンと星条旗は永遠なれが好きだ」という会話からも想像ができます(余談ですが、B・スプリングスティーン本人はとてもリベラルだそうです)。
また、ケラーの父の家が荒れ放題になっているのは、父の自殺をまだ自分で整理できてない事を表現し、その家がまるで迷路のような構造になっているのも迷宮に迷い込んでしまったケラーの心そのもののようです。
そして、ヘビがサタンの化身であり、入り組んだ迷宮の図像的シンボルでもあることを想像させ、その家でケラーは一線を超えた暴挙に出てしまいました。

まだまだたくさんの伏線が張られていますが、自分でもまだモヤモヤしたところが多い映画です。
ドゥニ・ヴィルヌーヴという監督はカナダ人であることから、外国人が見た「典型的な悩めるアメリカ」を描いているように思えます。プリズナーズ、これはもう「キリスト教原理主義に囚われたアメリカ人たち」としか思えない気がします。

ネタバレストーリーはここ


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