2019/12/25

「Madu+PERSIMMON 9号パラフィン帆布のトートバッグ」について 3/5

弊社で参考出品として合同展示会でお見せしたバッグをベースにし、生地の色とサイズ等を変更してMaduさまとのコラボ企画のバッグができあがりました。

そのベースとなったバッグの背景を5回に分けて書いてみます。


以前のブログをはこちらを参考にしてください。

1/5  https://www.persimmonllc.com/blog/madupersimmon-9-15

2/5 https://www.persimmonllc.com/blog/december-20th-2019


 仕立てについては、凝る所には手間をかけ、シンプルにするところは潔く簡潔にしました。

 見付けに9号帆布の耳をそのまま使っていることは大きな特徴の1つです。ジーンズでは良く見られる手法ですが、生地の耳が真っ直ぐでなく裁断するのが難しいため、バッグの量産工場ではとても嫌がられます。しかし、ほつれ止めの縫製を省略できることや、何よりスッキリとした見た目を出すために生地の耳をそのまま使いました。

 内ポケットの作りも潔さの1つです。

裏地のないバッグでは、一般的には「吊るしポケット」を見付に縫い付ける手法を採りいれます。しかし、これではせっかく耳を使った見付けが台無しになってしまいます。そこで、ポケットの生地を背胴に直接縫い付け、中央にステッチを入れ2分割にしました。このような仕立てだと下糸が背胴側に出てしまいタブーとされていますが、スッキリとしたポケットにするこため、敢えてこのような仕様にしました。

 本体の縫製もできるだけ簡潔にしました。このバッグの縫製の全行程は、革のネームタグの縫製を含め、11行程しかありません。縫製箇所を少なくする事で、縫製ミスが出にくくなりますし糸始末も減ります。

 本体口周りにステッチを入れないことも特徴の1つです。

一般的には見付けのバタつきを抑えるために、本体の口周りをぐるりと縫い留めますが、どうしてもバッグの見た目が平坦になってしまうので、縫い付けてありません。そのかわり、手紐を本体にリベット止めすることでバタつきを抑えました。

また、バインダー巻きの両端を見付けで隠してしまう仕立ても特徴の1つです。

2019/12/20

「Madu+PERSIMMON 9号パラフィン帆布のトートバッグ」について 2/5

弊社で参考出品として展示会でお見せしたバッグをベースにし、生地の色とサイズを変更してMaduさまとのコラボ企画として販売していただきました。そのベースとなったバッグの背景を5回に分けて書いてみます。

以前のブログをはこちらを参考にしてください。

1/5  https://www.persimmonllc.com/blog/madupersimmon-9-15




メインの素材は「丸進工業さんの9号帆布」に決めていました。

http://www.hanpu-ya.com

革やナイロンの選択肢もありましたが、シチュエーションを問わず気軽に使え、「素材そのものにストーリーがある」という点では倉敷の老舗帆布屋さんである、丸進工業さんの帆布以外には考えられませんでした。


前職で何年か前に工場見学をさせていただきました。自社で撚った糸が、轟音の響く中、古いシャトル織機によって帆布として織られるまでの迫力ある工程をを見学させていただくと、丸進工業さんの自社製品に対する真摯な姿勢にすっかり魅了されてしまいました。そして、いつしか自分のブランドでバッグを作る時があれば、必ずこの生地を使いたいと思い続けていました。

10号でも8号でもなく9号にしたのは、生地の目がとても綺麗であった事と、パラフィン加工された生地の表情と、バッグにした時のボリューム感のイメージが1番近かったからです。


最近は風合いのいいNCナイロンも出てきましたが「生地の耳をどこかに使いたい」という考えからもナイロンという選択肢はなくなりました。

2019/12/19

「Madu+PERSIMMON 9号パラフィン帆布のトートバッグ」について 1/5

「Madu+PERSIMMON 9号パラフィン帆布のトートバッグ」について 1/5




弊社で参考出品として合同展示会でお見せしたバッグをベースにし、生地の色とサイズ等を変更してMaduさまとのコラボ企画のバッグができあがりました。
そのベースとなったバッグの背景を5回に分けて書いてみます。

長年バッグ関係の仕事をし続けてきました。
主な内容は、デザイナーから依頼を受けたサンプルを作るという、少し特殊な仕事でしたが、お買い上げいただいたお客様の商品の修理や、自ら商品企画にも参加する事もありました。
何人ものデザイナーから依頼を受け、色々なデザインのバッグを幾つも作り、長年使われたバッグの修理をしていくうちに、MDに捉われず、もし自分で理想的なバッグを企画するのなら、どんなバッグにするのか?どんな素材、どんな縫製にするのか?と日々考えるようになりました。

バッグは所詮モノを運ぶ道具、何時でも何処でも気軽に使え、荷物を無造作に入れられるような使い勝手の良さは当たり前です。
パーマネントな道具としてバッグを考えると、ファッション要素は自ずと少なくなっていきますが、素材に何らかのストーリーがあり、シンプルな縫製ながら拘りを感じさせる箇所も入れたい。そして無理なく買える値段という点も大きな要素として含めたいと考えました。

そもそも世の中にはそんなバッグがあるのでしょうか?
1番近いのはLLビーンのビーントートでしょう。手紐が少し幅広であったり、せめて内ポケットが1つぐらい欲しいかな?とは誰もが思うところでしょうが、多くのバッグデザイナーも理想的なバッグの1つに挙げる人は多いと思います。
そんなビーントートにリスペクトしつつ、自分のフィイルターを通して理想のバッグをカタチにしてみました。